保護者向けコラム|そろばん
そろばん式暗算のしくみ
頭の中に珠が浮かぶまで
そろばんを習っている子が、そろばんを使わずに、指を小さく動かしながら答えを出す。あれが「そろばん式暗算(珠算式暗算)」です。どうして速く計算できるのか、どうやって身につくのか、研究でわかっていること・いないこと、おうちでできることを、そろばん教室の経験からお話しします。

そろばん式暗算とは
ふつうの暗算は、「7たす5は12」のように、言葉や数字で頭の中で考えます。そろばん式暗算はちがいます。頭の中にそろばんを思い浮かべ、その上で珠を動かして答えを出します。そろばんを習っている子が、机の上で指を小さく動かしながら暗算しているのは、頭の中のそろばんの珠をはじいているからです。
さわってみよう:下のそろばんは、珠をタップすると動きます。7を置いてみてください。上の珠を1つ下ろして、下の珠を2つ上げれば7です。
珠をタップすると動きます。上の珠は5、下の珠は1。
この数を、そろばんに置いてみよう–

5けたのそろばんで、もっと遊べるページもあります。そろばんであそぼうへ。
どうして速く計算できるの?
- 数が「形」になっている
そろばんでは、どの数も珠の形で表されます。慣れると、7と聞いただけで「上の珠と、下の珠2つ」の形が浮かびます。数を絵として見ているので、迷いが少なくなります。
- 計算が「珠の動き」になっている
たし算・ひき算は、決まった珠の動かし方(「5たして4をとる」など)でできます。くり返し練習した動きなので、頭の中でも同じように動かせます。
- 位(けた)が、見たまま分かる
そろばんは、けたごとに珠が並んでいます。頭の中のそろばんでも、一の位・十の位・百の位がはっきり分かれているので、けたのまちがいが起きにくくなります。
身につくまでの3つのステップ
| ステップ | どんな様子? |
|---|---|
| ① 本物のそろばんで、珠を正しく動かす | 指づかいを覚え、珠の動かし方が体に入る段階。ここがすべての土台です |
| ② 指を動かしながら、頭の中で | そろばんを置かずに、指だけ動かして計算する段階。目を閉じて計算する子もいます |
| ③ 頭の中のそろばんだけで | 指の動きが小さくなり、頭の中で珠が動く段階。1けたの数から始まり、少しずつけたが増えます |
指を動かして暗算するのは、まちがいではありません。頭の中のそろばんが育っている途中の、大事な段階です。慣れてくると、指の動きは自然に小さくなっていきます。身につくまでの目安は1〜2年ですが、通った期間や練習の量で、一人ひとりちがいます。
研究でわかっていること
そろばん式暗算は、心理学や脳の研究者によって、長く研究されてきました。わかっていることと、わかっていないことを、正直にご紹介します。
| テーマ | わかっていること |
|---|---|
| 数字の記憶 | そろばん式暗算の熟達者は、15〜16けたほどの数字を覚えられた(一般の大人は7けたほど)。この強みは数字だけで、文字や単語には見られなかった(Hatano & Osawa, 1983) |
| 頭の中のそろばん | そろばん式暗算を学んだ子どもは、学んでいない子どもより速く正確に計算した。頭の中に同時に置けるのは3〜4けたほど(Stigler, 1984; Frank & Barner, 2012) |
| 脳のはたらき | 熟達者が暗算するときは、言葉の領域より、形や空間をあつかう領域がよく働いていた(Tanaka ほか, 2002; Hanakawa ほか, 2003) |
| 子どもへの効果 | 5〜7歳の子ども204人を3年間調べた試験では、計算力と位取りの理解が大きく伸びた。一方、1年間の別の試験では、はっきりした差は出なかった。頭の中のそろばんを身につけた子が、まだ少なかったため(Barner ほか, 2016・2017) |
つまり、効果がはっきり出るのは、頭の中のそろばんを本当に身につけたときです。「そろばんをやれば頭がよくなる」とまでは言えませんが、計算の力と位取りの理解が育つことは、研究でも確かめられています。脳のはたらきについては、そろばんの効果・メリットでもくわしく説明しています。
おうちでできること
- 目を閉じて、1けたのたし算:「3たす4は?」と聞いて、目を閉じて答えてもらいます。指が動いていたら、頭の中で珠をはじいている証拠です。
- 数字カードあそび:数字を書いたカードを1枚ずつ見せて、たしていく遊び。テンポよく、楽しく続けられる量にします。
- 買い物で計算:「100円で、60円のおかしを買ったら、おつりは?」。生活の中の計算は、暗算のよい練習になります。
どれも、短く、楽しくが大切です。答えをまちがえても、すぐに正解を言わず、「もう1回、珠を思い浮かべてみて」と声をかけてみてください。
よくある質問
そろばんをやめたら、暗算もできなくなりますか?
珠の動かし方は少しずつ忘れても、数のイメージは残りやすいです。3級以上まで続けた子は、大人になっても暗算ができる人が多いです。
暗算が苦手な子でも、身につきますか?
身につきます。暗算は、本物のそろばんで珠を正しく動かす練習の先にあります。まずはそろばんで、たし算・ひき算を確実にできるようにすることが近道です。
何歳から暗算の練習をしますか?
そろばんを習い始めて、珠の動かし方に慣れてきたら、1けたの簡単な暗算から始められます。始める時期はそろばんは何歳から?もご覧ください。
学校の算数の暗算と、ぶつかりませんか?
最初は、やり方が2つあって戸惑う子もいます。どちらも正しい計算なので、先生が「学校のやり方も大事だよ」と声をかけながら進めます。慣れると、場面に合わせて使い分けられるようになります。
参考文献:Barner, D. ほか (2016) Child Development 87(4) / Barner, D. ほか (2017) Journal of Numerical Cognition 3(3) / Frank, M. C. & Barner, D. (2012) Journal of Experimental Psychology: General 141(1) / Hanakawa, T. ほか (2003) NeuroImage 19(2) / Hatano, G. & Osawa, K. (1983) Cognition 15 / Stigler, J. W. (1984) Cognitive Psychology 16(2) / Tanaka, S. ほか (2002) NeuroReport 13(17)

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